20‐1 『わかった?』は会話を終わらせる合図になる

学校でも家庭でも、よく聞くやり取りがあります。

先生が授業で説明をしたあと、

「みんな、わかったかな?」

と尋ねる。

すると多くの子供はうなずいたり、「はい!」と答えたりします。

家庭でも同じです。

「明日の持ち物、わかった?」

「帰ったら宿題やるんだよ。」

そんな声かけに対して、子供は元気よく「わかった!」と返事をします。

ところが翌日になると、

「あれ、聞いてない。」

「忘れちゃった。」

「どうやるんだっけ?」

ということが起こります。

大人からすると、

「昨日、わかったって言っていたよね?」

と思ってしまいます。

しかし、ここで考えたいのは、子供が嘘をついているのかどうかではありません。

実は、「わかった」という言葉そのものに落とし穴があるのです。

私たちは、「わかった」という言葉を、理解したことの証拠として使いがちです。しかし実際には、「わかった」には別の意味もあります。

それは、

「聞いたよ。」

「話は終わったよ。」

という意味です。

つまり、「理解した」というよりも、「会話が一区切りついた」という合図として使われている場合が少なくありません。

子供は先生の話を最後まで聞いた。だから「わかった」と答える。

親の話を聞いた。だから「わかった」と答える。

それ自体は決して嘘ではありません。

ただ、その返事の中には、「本当に理解できた」という保証までは含まれていないのです。

そしてもう一つ見落としがちなことがあります。

実は、「わかった?」と聞く大人側も、「わかった!」という返事を求めていることが少なくありません。

返事が返ってくれば安心できるからです。

子供もまた、「わかった」と言えば会話が終わることを経験的に知っています。

こうして、「わかった?」「わかった!」というやり取りは、理解を確かめるためではなく、話を終わらせるための記号として機能していきます。

これは子供だけの話ではありません。

大人でも会議や研修で説明を受け、「大丈夫ですか?」と聞かれると、なんとなくうなずくことがあります。そして後になって、「結局どういう意味だったんだろう」と思い返すこともあります。

人は思っている以上に、「理解したか」よりも「話が終わったか」に反応しているのかもしれません。

だからこそ、学校でも家庭でも、「わかった」という言葉だけを根拠に安心するのは少し危険です。

大切なのは、子供を疑うことではありません。

「どんな話だった?」

「どうしてそうなるの?」

問い詰めるのではなく、疑問のトーンで一言を添えてみることです。

本当に理解しているかどうかは、「わかった」の中ではなく、その後の言葉の中に表れるのです。


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